MONSTAR

おとぎ話を捨てて ぜんぶ 今ここで つくってしまおう

君をもう一度この胸に抱こう


「僕たちの魔法」と「調和の3」と「約束のうた」の話。
狙ったわけでもなんでもないけど3つのテーマの記事になりました。それぞれに特に関連もなく、ぶつぶつとただそれぞれの話をしています。




・僕たちの魔法
丈くんが、大橋くんと2人で歌う曲が見どころだと紹介していたこともあってこの曲は大好きなんだけど、それに加えてこの曲は本当にフローとダイのことを綺麗に対比させているように見えてとても面白い。

「平和を愛して僕は歌い踊るよ」
『平和を願って僕は剣を磨くよ』
平和に対して、歌と踊りを選んだフローと、剣を手に取るダイ。
平和を愛しているフローは、今の平和なルトフの日々が続けばいいなときっと思っていて、そんな日々を彩る歌と踊りを選んだ。平和のために自分が何かしたい、しよう、というよりも、ただこの温かくて幸せな生活をより彩るために歌い踊る道を選んだのかなあ。
対してダイは、何かあったときに今度は自分で平和を作れるように剣術を習っている。10年前に何もできなかったことをずっと後悔しているから。

「未来はまだ変えられるから」
『負けちゃだめさ暗い過去の記憶に』
未来の話をするフローに、過去の記憶に負けちゃだめだと歌うダイ。なかなか強烈な返しだなと思った。きっとフローが未来の話をするのは、前を向いているからではなくて、後ろを向けていないだけだからだと思う。過去に辛いことがあったけれど、前向きに生きていこう、ということではなくて、過去に蓋をしたから未来を見るしかないんじゃないのかなと。ダイは多分それに気付いていて、ちゃんと過去のことも受け止めないと、と歌う。

2人してリューンの里のことを思い返していたとき、フローが耳を塞いでしまったのはきっと、全然あの日のことを消化できていない証拠で、見ないふりして生きてきたから。だからちょっと振り返っただけで、あの時の恐怖とか悲しみとか苦しみとか、1つも整理されないまま、5歳のあの時のままになっているいろんな感情が溢れてパニックになってしまう。

そんなフローの横で、ダイはぐっと手を握り締めて悔しそうな顔をしていた。目を逸らさずに、あの日のことをちゃんと受け止めていた。そして耳を塞ぐフローにそっと寄り添って、「耳を塞いでも聞こえなくはならない」と言うダイは、過去ときちんと対峙できる強い子なんだと思った。

「『空かざした手は幸せをつかむため
まだ涙にしか届かない指だけど
風に夢を描けばきっと叶うよ
それが僕たちの魔法 魔法さ』」

『もっと強ければ里は焼かれなかった』
あのときもっと自分が強ければ、敵を倒せた、あんな悲しいことにはならなかった。だからきっとダイは剣を磨いている。マーナムも言う通り、平和のためにまだ兵士は必要で、平和を願っているダイはもし次何かあったときに立ち向かえるように、強くなりたいと思っている。

「殺しあうだけじゃ何も生まれはしない」
強くなって相手を殺したって何にもならない。親や里の仲間を殺されて怖くて悲しい思いをした自分たちと同じ人を生むだけ。最後の歌にもあるけど、もし恨みを晴らしても復讐の連鎖が続くだけ。だからフローは魔法の力で調和が訪れることを願っているのかなあ。

『剣は人を守るためある』
だけどダイにとって、剣を手にする理由は大切な人を守るため。殺しあうためじゃない、そんなふうにも剣は使えると知っている。

「忘れないで人は迷う生き物」
そうかもしれないけど、人は何をしてしまうか分からないよ、気を付けて、と言うフロー。まるでこのあとダイが滅びの剣に憑りつかれてしまうことを知ってたみたいに。昔自分たちの里を襲ったのは、剣を手にした人だったんだもんね。心のどこかで、人は何をするか分からない、人って怖いと思っているのかもしれない。

「『空かざした手は幸せをつかむため
まだ涙にしか届かない指だけど
風に夢を描けばきっと叶うよ
それが僕たちの魔法 魔法さ』」

「本物の剣は人を殺す道具だよ、忘れないで」
『大丈夫。俺にはお前がいる。もしも俺が道を誤ったときは、お前が俺を救ってくれる。そうだろ?』
「うん。約束する。この身を挺してでも」


どうしたって、フローにとって剣は恐ろしい道具で、恐怖や辛さの象徴なんだろうな。剣で刎ねられた父さんの生首が1番古い記憶。あの戦争でたくさんのものを奪っていった剣。だけど、ダイを救うためにはその剣を手にするし、その剣を手に入れるために自分の左腕をも差し出せてしまうフローのことを思うと胸が熱いし痛くなる。

そしてダイは本当に強い子なんだと思った。まずあの過去ときちんと向き合えていることが本当にすごいと思う。そのうえで、自分に力がほしいと思って剣を習っている。いつか復讐してやる、という気持ちに乗っ取られているわけではなくて、ただ、もし次に平和が崩れるようなことがあったときに、大切な人を守れる自分でありたいから。そう、ダイは滅びの剣に支配されてしまって、闇だとか弱いとか言われるけれど、そんなことないと思う。あのとき滅びの剣を掴んで里に走っていったのも、大事な里が襲われていて助けに行かないと、って思ったからで、最初は復讐のためじゃなかった。悲しいことにも、偶然里を襲ったのは、10年前の親の仇で、「今の僕らはあの日の子供じゃない、殺してやる」と剣を手にしてしまうけれど。

それだけ強いダイが、フローを信じている。「俺にはお前がいる」ってなんて素敵で重い言葉なんだろう。そしてそれに対してフローは、身を挺してでも救うと約束する。めちゃくちゃに熱くて泣けるやり取りだなって思う。



・調和の3
3を見つけるのが楽しい。探してみるといろんなところに3がある。

・フローとダイとエルカ
・地球と2つの月
・かまども3つ
・3がテーマの宿屋
・1は独占、2は対立、3こそ調和の数字
・空と海に陸
・昼、夜、あいだに夕焼け
・蒸す、煮る、焼くで料理も最高
・ダナトリア、アリーシャ、産まれてくる子供
・双子だったらどうする?もう1人作ればいい
・フローリアの仕事。かまど亭の主人、里の長、お母さん
・通過の儀は三日三晩
・3足揃いの長靴、3つ穴のオカリナ、3本になった枝毛、サンダルに踏まれた三葉虫
・演技にダンス、そして音楽
・3つの声で呪文


3つのかまど亭のテーマでは特にだけど、3にきちんとこだわっているんだね。ファンルンがダイス先生に言われて集めてきたものが3繋がりなのとか、すごく楽しい。


1番大きな3は、フローとダイとエルカの3だと思う。フローとダイがルトフの里にやってきて、エルカと3になる。フローリアはエルカに3をあげたくて、2人を連れてきたのかもしれないなとも思った。エルカのお父さんの話は1つも出てこなくて、あの家族はずっとエルカとフローリアの2だったから。
フローとダイが3になったとも、エルカが3になったともとれる、フローとダイとエルカの3。

そしてフロー、ダイ、エルカの3人にファンルンがやってきて4になってしまって調和は崩れるし、ダイがいなくなってフローとエルカの2になって、調和はずっと崩れっぱなし。そのあとファンルンと一緒に3人で旅はするけど、ファンルンは裏切り者だったから、実際のところはずっと2のままで。

とはいえ、ファンルンが調和を作っていた瞬間もあったよね。フローがダナトリアに突っかかって剣を向けられたとき、その剣を止めたのはファンルンだった。会話に熱が入っていく間、ずっとフローをかばってくれていた。それだけじゃない、たたらの島でコーリオが歌うのを聴いて悲しげな表情をするフローに、どうしようもないんだよと慰めるように頷いたり、「何があったんですか?」と島の人と関わろうとしたエルカを止めたり。2人より少しだけ大人で、戦争にも行ってこの世界の現実を2人よりも少しだけ多く知っていて、それに飲み込まれてしまわないように守ってあげているように見えた。
いくらスパイだということがばれないように仲間として振る舞っていたとはいえ、それにしたってファンルンはいい奴だったよなあ。あれだけフローのことを痛めつけたのは許さないけど。


ダナトリアとアリーシャに3の調和をもたらす、そして里の宝になると言われていた2人の赤ん坊の産声で、滅びの剣を持ったダイの動きは止まる。調和の3とは少しずれるのかもしれないけど3であり、新たな命にはそういう神聖さや神秘的な力があったりするのかなって。あのときだけは、「リューーーン!」って声じゃないけど滅びの剣が止まって印象的だった。


劇中劇での魔法使いと王と盲目の少女、という3人の構図は、世界の果てでのフローとダイとエルカの3人の構図と重なるように見えた。魔法の力を信じるフローと、滅びの剣を手にしてしまったダイと、少女エルカ。盲目の少女はフローリア説を見掛けてからは、その娘のエルカがやっぱり盲目の少女に対応するのかなと思っていて。

これの面白いところは、劇中劇と現実では少女の役割が違うところ。劇中劇では、少女は魔法使いの魔法で目が見えるようになって「この世には素敵なものがいっぱい」だと気付いて感激するけれど、現実では逆に少女のエルカが「素敵なものがこの世にはいっぱいある」とフローとダイに教えてあげる。そうやって色づいていく世界にフローとダイは気付いて笑うようになる。新しい世界へ導く側へと少女の立場が変化している、というのは、かつては自分が素敵な世界を教えてもらった側という過去を踏まえてのものだったら面白いなと思った。



・約束
「1人焼け跡をどこまでも歩いた」
『1人はらぺこのまま歩き続けた』
「見つけたパン」『奪うはずが』
「2つに分け」『渡してくれた』
「ねえ君は」『誰なんだ』

「もたれ合っていつか眠った」
『もう死ぬんだそう思ったとき』
歌が聞こえたフローリアの歌が
闇を切り裂く それは光だった

ある朝 旅から ママが連れてきたの2人
身も心も傷ついてた

花 夢 空 愛 歌や踊りや
素敵なものがこの世にはいっぱいある
一緒に笑い泣くことは生きること
教えてあげたかった


このエルカの歌を聞いて、フローは何かを決意したようにうなずく。そして、
「もし恨み晴らせば続くだろう 復讐の連鎖が
だから風の歌を歌う 約束だね 君を止める」
と歌って持っていた剣を置く。そしてダイと向き合って、ダイへ手を伸ばす。
「約束したんだ!道を誤った時は、身を挺してでも、君を救うと」

このときフローは、ダイのことを抱きしめようとしたんじゃないかな。
滅びの剣からダイを救う方法は、魔法でも、剣で殺すことでもなく、愛だったんじゃないかと。

滅びの剣を固めたのは、王が抱いた魔法使いへの嫉妬や憎しみで、その逆を歌うとはきっと、相手のことを受け入れること、抱きしめてあげること、愛すること。ありきたりな結論なのかもしれないけど、私はそう思った。し、風の魔法使いたちの歌に「風の歌に怒りほどき 愛を受け入れたまえ」って歌詞があると知って、あながち的外れでもないのかなあと思ったり思わなかったりしている。


このシーンはほんっとうに美しいよね。切ないけど大好き。まずこの約束の歌が好き。そして後ろの映像の演出が好きすぎるところある。

2人は同じ里の生まれで、戦争が起きる前から知り合いだったのかと思っていたけどそうではなくて、あの里でたった2人だけ生き残ってしまったから出会った。戦争があったからこそ出会えたなんて、こんなに悲しい始まりはない。そしてフローが持っていたパンを見つけて、ダイは奪おうと思ったけれど、ダイの手が伸びる前に、そのパンを2つに分けて渡してあげるフロー。優しすぎていっそいじらしい。泣ける。まだ5歳で、親も仲間も亡くした中で、初めて出会った人にそんなことできる?いや、そういう状況で出会った仲間だからこそなのかな。

そうして出会ったけれど、そのままもたれあっていつのまにか眠ってしまって、もう死ぬと思った。そりゃそうだよね、腹ペコのまま歩き疲れて見つけたたった1つのパンを2人で分け合っただけなんだから。
でもフローリアの歌が聞こえて、フローリアが2人をルトフの里へ連れ帰って、エルカとの出会いがあった。調和の3になった。フローが言っていたように、2人にとっての「調和の3」はエルカだったんだろうな。

そのあとエルカが、花、夢、空、愛って素敵なものを1つずつ教えてくれるときに、モノクロだった後ろの映像が少しずつ色づいていくのが本当に綺麗。そしてそのことに先に気付くのはダイで、フローの服を引っ張って、ほら、見て?ってフローに教えてあげる。これがまたぐっとくるよね。最初にパンをあげたのはフローだけど、素敵な世界に気付かせてくれたのはダイなの。そうやって世界が色づいていく様子を見てだんだんと笑顔になっていく様子がまた好き。


昔のことを思い出しながら、フローは剣を置く決意をして、最後を迎えるわけだけど、このあたりのことは1つ前の記事で書いたから割愛。ダイを救おうとしたことがまたフローの救いであり、ダイは救いを受け入れること自体が最初の救いであったらいいなと、その軸が「愛」という3つ目の選択肢であったらいいなと思う。