MONSTAR

おとぎ話を捨てて ぜんぶ 今ここで つくってしまおう

守りたくて救われたい

リューンにまつわる長いながい独り言。
だらだらと思ったことを思ったように書き連ねているだけなので、あほみたいに長くて読みにくい文章です。系統立ててまとめるという能力と気持ちが足りませんでした。「気持ち切らすなって」の声が聞こえますね。はたしてこの記事を読む人にこのネタは通じるんでしょうか。

まあとにもかくにもまとまりがないので、しぬほど暇なときか、なんでもいいからリューンの話を読みたいと思ったときにでも読んでください。言うまでもなくネタバレもしぬほどしています。





結局のところ、リューンとはフローの成長の物語で、フローが強くなっていったことに理由なんてないんじゃないだろうか。15歳で、通過の儀を控えて、子供から大人になる過渡期に1つの試練を目の前にして、それを乗り越えようとしたことによる成長。だって成長に理由ってないじゃん。ああして1つ強くなって大人になることを成長と呼ぶし、周りの人や環境や経験から自然とそうなるものなのでは。という考察する意義を自分でぶっ潰してしまう結論に至ったわけなんですけど。

たぶん、フロー自身も強くならなきゃとか、成長しなきゃ、なんて意識はなかったと思うんだよね。何をやっているのか、自分でもあんまりよく分かってなかったんだと思う。ダナトリアの言った「自分の行動を理解していない蜂」はまさにその通りで。ダイを刺そうとしたエルカの間に入ったのも、ダナトリアとダイの間に割って入ったのも、何があってもダイを救おうと戦い続けられたことも、きっと本能的なもので、自分で何やってるのかも分かってなかった気がする。だけど、ああいう場面で思ったように体が動くようになったことは、フローにとってのまず1つの成長なのかなと。怖くて泣いて耳を塞ぐだけだったあのときのフローからちゃんと大きくなっていたと思う。し、そのことにフローが気付けていたらいいなと思った。


じゃあもうフローは過去ときちんと対峙できるようになったのかと言えば、それはそれで別の問題なのかな。たたらの島でダナトリアと出会ったときに、あんなにも冷静にダナトリアと話せてしまっていたのは、どう考えても過去を乗り越えていたからではなくて、ダナトリアと過去の記憶がきちんと結びついていなかったからではないかと思っていて。あれだけのトラウマを植え付けた張本人を目の前にしても、さん付けで名前を呼び、報復とか代償とか正義とかは分からない、とか普通に話せないよね?ダイみたいに思い出して我を忘れて突っかかったり、耳を塞いだフローのように震えて何もできなくなったりするのが普通の反応なのに、あんなに落ち着いていたフロー。

記憶の細部がもしかしたらないのかもしれないなあ。恐ろしかった出来事、というぼんやりとした塊でしかなかったのかも。最初の「刎ねられた父さんの生首」の記憶が大きくて、とにかく恐ろしくて、そのほかは匂いとか、兵士の声とか、感覚としてぼんやりしたものしか残っていなかった。覚えてなんていられなかったし覚えていたくもなかったのでは。記憶として残していたら、生きていけなかったから。

だからやっぱりダナトリアのことは覚えていなかったんじゃないかな。「復讐とか報復とか、正義とか代償のことは分からない」と言うフローはどこか幼いし、そういう感情とか概念と向き合うことも避けてきたのかもしれない。とことん、前とか調和しか見ないようにしていたのかもしれない。そうしないと壊れてしまうから。この旅に出るまで、あんまりフローの意思とか自我ってなかったのかもね。


そんな中、ダイとの約束を果たそうと自分の意思で動いていく。何があっても逃げない、というのがすごい。右耳も声も奪われて、痛くて辛くて、もうやめたい帰りたいって思っても仕方がないのに、それでもダイのもとへ向かった。

魔剣と引き換えに試し斬りを了承したとき、「君のためには絶対に歌わない」と言ったとき、ダイと対峙して剣を置いたとき。フローが決断した場面の中でもこの3つは特に大きいものだと思っていて。


試し斬りを了承したときって自己犠牲の精神がすごいよね。あんなに簡単に腕を差し出せる?剣で切るんだよ?父さんの首を刎ねた剣でだよ?そんな簡単に。しかも本人としては、このさき歩いていくための足は残るから左腕なら大丈夫、みたいな気持ちでいるところがまたすごい。全然大丈夫じゃないのに。痛いよ。エルカに向かって「大丈夫」って笑う余裕なんて普通ないよ。あれを、フローが強くなったから、というにはあまりにも無理がある。強いというか怖い。あんまりことの重大さが分かっていなかったように見えた。なんにも考えてなさそう。

怖いもの知らずというか、不気味さがある。でも、ファンルンの申し出を断ったときには、フローの強い意志があって、絶対に悪には加担しない、「僕の歌は祈りだ」と言う。悪とか殺戮とか、何かを傷付けることに関わるって、絶対にフローの中ではできなことなんだろうね。あのときあれだけ怖い思いをしたことだから。だからダイが剣も歌も学んでいたのに、フローは剣術を学ばなかったし、エルカに対しても「落ち着いて」としか言わない。

そういえば滅びの剣が復活してしまって、フローリアたちが駆け付けた時、フローは1人でずっと震えていた。あれは何に対して震えていたんだろう?人が狂う姿を見て、昔を思い出していたから?やっぱり人は迷う生き物だし、剣は人を殺す道具だと思った?あのときのフローを抱きしめてくれる人がほしいよなあ。切ない。それからあのシーンでフローリアたちが駆け付けた時、フローがエルカからぱっと離れるのはなんでなんだろうね。フローリアに怒られる!と思って離れたのかとも思ったけど、そのあとすぐ「ごめんなさいフローリア、僕たちが」って謝るからそういうことでもないんだろうし、エルカとフローリアの関係性に何か重いものを勝手に抱いているのかな。


もっと話を逸らすと、「僕の歌は祈りだ」の発言ってわりと唐突じゃない?え、そうなの?祈りを込めて歌ってたの?って気持ちになったのは私だけなんだろうか。「平和を願って歌い踊るよ」の願いが祈りってことなのかな。あーーじゃあダイだけじゃなくて、フローも平和のために行動を起こしていた?とここまで書いてフローは「願って」じゃなくて「愛して」だと気付きましたね、違うわ。んーー、平和を愛して、平和や安寧への願いを込めて歌っていたということなのかなあ。


で、はい、話を戻すと、それだけ争いが嫌いだったフローが、それでも剣を手にする決意をするってすごいことだと思う。戦いや争いを受け入れられなかったはずなのに、ダイと剣を交える。いやそもそも歌で救えるってことにフローはどうして気付かなかったんだろうという疑問は捨てきれないんだけど。だってエルカのことは歌で救えたし、最初から戦う必要はなかったじゃん。あのとき声が出なかったから、やむを得ず剣を手にしたのかと言えば多分違って、その前からずっと、「ダイを殺しに行く」という意志でここまでやってきていて。フローは歌の、魔法の力に気付けていなかったのかなあ。あのときもし、声を失っていなかったら、フローくんはどうしていたんだろう。


でも「ダイを殺しに行く」は目的ではなく手段であって、あの旅の目的は「ダイを救うこと」だったじゃないですか。だから最後にフローは、ダイを滅びの剣から救う方法は「殺すことではない」あるいは「殺すほかにもある」と気付いて剣を置く。ダイのことをそのまま受け入れようとする。「救う」ってどういう意味だったんだろうなあ。何から救うの?滅びの剣から?滅びの剣から救うとはどういうことなの?剣の支配から解き放つことなのかな。あの剣は手から離れることはなくて、死ぬまで人を殺し続ける。剣とダイを引き離すためにはダイが死ぬしかなくて、だから殺す、なのかな。


そもそもダイは、「俺に何かあったときは」救ってくれ、ではなくて、「俺が道を誤ったときは」救ってくれと言っていて、ただ助けてほしいんじゃなくて、正してほしいという意味だったんだと思う。「滅びの剣を手にしてしまったこと」それ自体がきっともう誤りなんだよね。ダイ自身、あの滅びの剣を作った愚かな王を演じて、伝説とはいえ人を殺し続けた剣を手にしてしまったこと。それが、里を救うためだったらまだ救いはあったけど、最終的にあの剣に手を伸ばしてしまった理由は復讐に目が眩んでしまったから。それを正すとは、剣から離れさせることであって、そうするためにはあの時の情報量で導ける方法は殺すことしかなかった。けどもっと根本的なことを言えば、昔のことにとらわれるのはもうやめようってことだったんじゃないかな。それはフロー自身にも言えることだけど。
2人とも反対方向にずっと過去にとらわれ続けていて、この旅は無意識の中でその過去と戦う旅でもあったのかな。


ところでダイを殺すのは「救うため」というところが熱いよね。自分たちの仲間を殺していって、このままだと誰もかれも殺してしまう、そんな者を生かしておけない始末しなければ、ではなくて、このままだとダイが殺人を重ねて苦しんでしまうから助けよう、という考えでダイを殺しに行く。ダイのことを「剣に憑りつかれた化け物」ではなくて、「剣に支配されて苦しむ人間」として扱っているところ。ファンルンが滅びの剣と戦ったときに2回とも「こいつ化け物かよ」と言うのと繋がっているのかもしれないと思ったり思わなかったり。

剣とともに現れた黒い獣は、獣が言う通りきっとダイの一部で。憎しみや復讐心の化身だったんだと思う。剣に支配されてしまうのは、もちろんそれが剣の力でそういう設定だと言われたらそれまでだけど、もとの剣の力とダイの憎しみが呼応してしまったからだと思う。だから、その憎しみがある限りはダイが獣で獣がダイだったから、滅びの剣をもってしても獣のことは倒せないし、逃れられなかった。獣が死ぬ=ダイも死ぬってことで、やっぱりあの剣を滅ぼすためにはダイが死ぬしかない。という解釈だった。

だけどその根本のダイの憎しみが消えれば、剣に打ち勝つことはきっとできて。そのために「逆の心を歌う」のかなとも思って。実際には最初にこの剣を生みだしてしまったダイスが罪や憎しみを受け入れることでしか剣は風に戻らなかったのかもしれないし、フローがあのままダイに向かっていっていればフローは死んでしまっていたのかもしれないけれど。こう、最後は2人で完結させてくれよとも思うよね。そこまでの重荷を2人はまだ背負わなくてもいいよってことだったのかなあ。いやそれならさっさとお前が来いよなと思ってしまうけど。あんなにもフローが苦しむ必要なかったじゃん。まあそのおかげでフローは成長できたし、そういう物語なんだけど。大事なところで絶対3になってしまう。間に誰か入って話が進んでいく。


ダイは過去と向き合える強い人ではあったけど、だからと言って過去を完全に乗り越えられていたわけではなくて、フローと同じように過去と戦って苦しんでいたんだなあと。その象徴が黒い獣であって、「虐殺におびえたあの日の子供じゃない」と言われて、「だけどなぜみんなを殺さなきゃならない?」と聞く。「あの日の子供じゃない」はダイも同じように歌っていたけど、きっとダイと獣の言う意味は違っていて、ダイは、自分は強くなったからという意味で、獣は剣の力を手に入れて無敵になったという意味で。そしてその無敵さは、ダイが自力で身につけたものではないから、その代償が必要で、代償に血がいる、だから敵だけでなく味方も殺してしまう。
血の代償が必要だということは、ダイにとってはきっと不本意なことで、ただ、強くなりたかった、大切な人を守れる力がほしかっただけなのに、剣に支配されてしまった。


ダイはフローに「もしも道を誤った時は、お前が俺を救ってくれる」と言って、フローは「約束する、この身を挺してでも」と返すけど、同じように自分が道を誤った時には救ってくれとは言わないんだよね。フローのことは誰が救ってくれるんだろう、誰が抱きしめてくれるんだろう。ダイにフローのことを信じられる強さがあったことはすごいと思うし、そうやって人に頼ることを知っているからあれだけ強く生きることができていたのかもしれないし、フローに頼り切る気持ちなんてなかったことは分かっているんだけど、滅びの剣に支配されてしまったときに、「リューン・フロー、約束したよな?」って縋るようにフローに問いかけるのはさすがにフローが可哀想すぎることない?そんな、フローが悪いみたいに言わないでよって思ってしまった。それは私がフロー目線でこのお話を見てしまっている証拠なんだろうけど。

約束したのに救えなかったってフローが後悔するのは分かるけど、なんで救ってくれなかったのってフローを責めるのはなんかちょっと違うよなあって。そんな冷静にいられない気持ちもわかる。自分ではどうにもできなくて、フロー、助けてくれよって思う気持ちもわかる。わかるけど、あんな切実な声を聞いてしまったら、フローはどうしたってあの約束に縛られてしまうじゃんって、思ってしまった。


だけどもダイがああして素直に、いやもうあれはきっと本能なんだろうけど、誰かに助けをきちんと求められることも大切なことだったんだろうな。もっと自分に力があればと過去の自分を悔やんで、今度は自分が守れる存在になろうと1人で突き進んできたダイが、誰かの救いを求め受け入れること。「あの日の子供じゃない」と叫んだけど、まだ子供のままでもいいんだよって思える余裕があっても良かったんじゃないかな。

この台詞をめぐっても、ダイとフローは反対な気がする。ダイはまだ子供だと思っていてもよかったし、逆にフローはもう子供じゃないと思える成長が必要だったように思う。
そんなふうに過去と成長をめぐって物語は進んでいく。結果としてフローはダイを救うために、あの日の子供じゃない、大切な人のためにつき進める強さを手に入れるし、その救いのために見つけた「愛」という答えは、きっとダイにとっても、それを見つけたフローにとっても大きな救いになったと思う。




フローは救いたかったし、ダイは救われたかった。

過去に怯えていたフローが救われたくて、人を守るために剣を磨いていたダイが救いたいと思っていた、ように見えてきっと逆でもあった。フローが救う立場になること、ダイが救いを受け入れる立場になることが、2人には必要なことであり救いになったんだと思う。

そう考えるとフローが光でダイが闇というのもしっくりくるし、フローとダイの配役を丈くんと大橋くんで入れ替えてもしっくりくるのかもしれないと思った。丈くんのダイと大橋くんのフロー。

まあ、丈くんがダイなら「俺にはお前がいる」なんてきっと言わないし、「約束したよな?」って縋らない気もするし、大橋くんがフローならもっと早く強く滅びの剣を手にしたダイのことを止められる気もするし、役の解釈が変わってくるんだろうなとも思うけど、それはそれで見てみたいなと思った。




考えれば考えるほど面白いお話だったなーーーー

リューンはフローの成長のお話
フローとダイが過去と戦い向き合う旅
フローは救いたくて、ダイは救われたかった


思うままに書いたので矛盾するところは多分にあると思うけど、考えたかったことはわりと書き殴れた気がするので一旦終わりにします。
長いながい妄想文でした。